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☆『札響3ちゃんねる"クラヲタへの道"』は”季刊ゴーシュ”で連載中です。☆

その10 演奏家の騒音問題(切実)。

(2008夏 季刊ゴーシュ第14号掲載)

 7年ぶりに新しいパソコンを買った。 Celeron1.3Gから Core2Duへの買い替えだったので、4世代くらいのCPUを一気に進化した感がある。あまりの速さに「ヌオーーーッ!」と一人驚きと喜びの奇声を上げて大満足。 しかし悩みが一つ。PCケースのファンの音がうるさい・・。 PCの中に掃除機が入っているのではないかと思ったほどだ。 翌日ショップに相談に行ったが「ある程度は仕方ない」と店員は困惑気味。

 実はこの手のノイズ問題は多くの職業演奏家にとって切実な悩みなのだ。物干し竿の宣伝カー、スーパーで流れる連呼調の歌、スキー場の音割れした歌謡曲、家電量販店の特売放送など・・・、気になって何も考えられなくなる。 意外なところでは喫茶店や事務所などで流れているクラシック音楽。 相談や商談の場面でも耳が楽音を拾ってしまい全く話しに集中できないのだ。 許される場所では「申し訳ありませんが・・・」と言って音楽をとめてもらう。

 そんなわけで、”神経質”と言われてもある程度仕方ない状態ではあるが、以前住んでいたマンションで困り果てたことがあった。上階に越してきたおじさんがジャズを聴くのが趣味で、仕事から戻ると毎晩ステレオを聴く。 休日などは朝から夜までジャズが流れる。私のパソコン部屋にジャズのベース音が上からズンズンと響き渡ってくる。 仕事が手につかない。赤ん坊だった子供は昼寝できない。
最初は自分の”神経質”を疑ったがある日たまりかねて(丁重に)苦情を言いに行ったら、「アンタのとこの楽器の音だって聞えるんだぞ!」と逆ギレされてしまった。 防音室の中で弾いていたのに・・と思ったが、どうやら私のチェロのレッスンが「教室としての使用禁止」という規約に違反しているじゃないか、とステレオおじさんは怒りを溜めていたらしい。

 人間関係が悪化すると相手の出す僅かな音でも許せない気持ちになってくる。 そのうちステレオおやじとは廊下で出会っても挨拶もしないようになってしまった。 それからしばらくしてステレオおやじは住民が呼んだ警察官に騒音を注意されたそうだが、ステレオはその後も鳴りやまなかった。

 マンションの騒音問題はやっかいだ。 あのブーニンがマンションの住人に騒音で訴えられ退居したのは有名な話しだ。 しかし演奏家とて都会でマンションに住むのはある程度仕方がないことだ。 パソコンの方は風量が大きく音も静かなファンを見つけて付け替え無事に解決した。 しかし家はそうそう簡単には替えられない。演奏家の住宅問題は当分解決しそうにない。